(小梅)パパ?
(恭一郎)小梅?

 

カバンで後ろを隠す

 

〈思えば
長い修行のような日々の連続〉

 

〈父親としては
あってはならない屈辱もあった〉

 

〈ハラハラドキドキの連続〉

 

〈だが それがついに
終わりを告げようとしている〉

 

〈そう そのキーアイテム それは〉

 

〈10年に一度 実をつける伝説の桃〉

 

≪(ひそか)あの桃はね→

 

ただ食べただけじゃ
入れかわらないんだよ

 

かわらないじゃん

 

かわらないな…

 

(和香子)奥様と入れかわりたいな

 

〈この機会を逃したら
元に戻れるのは10年先〉

 

〈それなのに…〉

 

〈そこには最大の敵が
待ち受けていた〉

 

(中嶋)西野さん これね

 

タマゴダケっていうキノコなんだよ

 

どうする?
ムリヤリ取り返す?

 

ダメだ 中嶋だっているんだぞ
慎重にいかないと

 

そんなノンキなこと言ってたら
あの桃食べられちゃうよ

 

もういい

 

西野さん

 

すまないけど その…
リュックの中にある

 

拾った桃… 譲ってくれないかな?

 

桃? キノコじゃなくて?

 

小梅にどうしても
食べさせてやりたいんだ なッ

 

大好物なんです

 

本当に… 娘さん思いなんですね

 

でも これだけは
譲りたくありません

 

これだけはッ

 

私だって 人と人とが
入れかわるなんて

 

本当に信じてるわけじゃない

 

でも…

 

どうしても あきらめられないの!

 

桃ッ
西野さん!

 

いった!

 

どうしちゃったの 西野さん!

 

ちょっと待って
西野さ~ん

 

来ないで!

 

どうしても 気持ちを
おさえられないんです!

 

《幸せって
どこにあるんでしょうか?》

 

《自分らしく あり続けようと歩く
その先にあるもんだと思うよ》

 

《愛する人とともに》

 

私達の関係は
あのときからじゃないですか

 

(恭一郎・中嶋)関係!?

 

関係なんてナイナイ!

 

関係って どういうことですか?

 

リーダーだって 私のこと愛してるのに

 

家庭があるから
思いとどまってるんですよね?

 

私は!

 

もう二度と
傷つきたくないんです!

 

西野さん…

 

〈お昼のドラマで
西野さんみたいな人よくいる〉

 

この桃で…

 

恭一郎さんの

 

心が手に入るって

 

信じてるから

 

あッ!
待って

 

桃を手に入れれば
人の心も手に入るなんて

 

西野さんのそういう考え方
よくないと思う

 

そういう考え方 自分勝手だよ
ゆがんでるよ

 

だって そうするしか!

 

奇跡だと思う

 

好きな人に
自分を好きになってもらうって

 

すっごく大変なことだよ

 

ある意味 奇跡だって思う

 

でもそれは

 

相手の幸せを純粋に
祈る人だけに起こる奇跡なんだよ

 

奇跡?

 

西野さんなら
きっとすばらしい人

 

すばらしい奇跡に出会える

 

西野さんを思ってる人は
いっぱいいるよ

 

中嶋さんだって…

 

本当に西野さんのことを…

 

私にも 奇跡が起きるんでしょうか

 

もちろんだよ

 

あッ!

 

危ない!

 

うわッ!

 

パパ!

 

〈今は 私がパパを守らなくちゃ!〉

 

〈お願い神様 パパのこと助けて!〉

 

〈お願いッ!〉

 

〈小梅ッ!〉

 

(中嶋・和香子)リーダー!

 

〈パパッ!〉

 

♪♪~

 

(医師)指を見て~

 

もう大丈夫です

 

(理恵子)よかった~!

 

〈私… 助かったの?〉

 

〈なんか… 手がジンジンする〉

 

〈あれ? この手は…〉

 

〈もしかして!〉

 

≪(理恵子)小梅…
どうしたの 大丈夫?

 

ママ…

 

私 小梅だよね?

 

何言ってるの 小梅

 

小梅だよね!?
そうよ…

 

戻ってる…
≪(理恵子)えッ?

 

戻ってるッ
≪(理恵子)ええ?

 

やったー!

 

私だ 戻った! やった!

 

少々 興奮状態ですね

 

いえ 私すっごく健康です
頭も正常です

 

ちょっと冗談いっただけ

 

よかった~

 

ねえねえ パパは?

 

≪(看護師)先生→

 

パルスと血圧 下がってます

 

カテコラミン 準備して
はい

 

パパ!?

 

意識が戻らないの…
えッ!?

 

そんな…

 

運ばれたときは
少し意識があったの

 

《(理恵子)パパ パパ!》

 

《小梅は無事か?》

 

《小梅は…》

 

《小梅は大丈夫よ 安心して》

 

《よかった 無事で…》

 

《理恵子 俺が死んだら》

 

《小梅を頼む》

 

《俺はお前達の幸せを祈って…》

 

《≪(理恵子)パパー!》

 

〈パパは最後まで
私を心配してたんだ〉

 

≪(理恵子)うわごとでずっと…→

 

「小梅… 小梅…」って…

 

〈私 パパを守りきれなかった〉

 

パパ?

 

なんで?

 

私… パパが私達のために
がんばってくれてるって

 

せっかく分かったのに!

 

私 まだ親孝行してないよ!?

 

こんなことになるなら…

 

もっと優しくしてればよかった

 

もっとパパに いろんなこと
教えてほしかった!

 

パパ 大好き
ありがとうって

 

言いたかったよ

 

パパ…

 

パパ?

 

パパ!

 

目 開けてよ!

 

パパー!

 

うわッ!

 

生きてる

 

当たり前だろ ママや小梅を残して
死んでも死にきれないよ

 

あ~あ よく寝た

 

あッ イテ…

 

痛いけどやっぱり

 

自分の体はいいなあ 小梅 なッ

 

泣いてんの お前 小梅?

 

おどかさないでよ!

 

≪(医師)今日一日は ここで安静に

 

俺達

 

パパ!
やった!

 

1・2・3ヘイ!

 

2・2・3プー!

 

寝てなさい!

 

パパも! 二人とも
4日も意識がなかったのよ

 

4日も?
りっちゃんなんて

 

面会謝絶なのに こんな千葉の
奥まで 会いに来てくれたのよ

 

「絶交なんて言ってゴメン」って
泣いてたわよ

 

大杉先輩も一緒に
来てくれたわよ

 

試合前なのに…

 

ママ今 何曜日の何時?

 

火曜日の→

 

12時半すぎ

 

健太先輩の試合!
御前会議

 

(ホイッスル)

 

≪(主審)礼!

 

≪(選手達)お願いします

 

≪(桜木)川原君はどうしたんだ?

 

川原リーダーは 体調不良のため
欠席いたしますので

 

代わりに 私がご説明いたします

 

(役員達)何だよ~

 

ご静粛に願います!

 

それでは
始めさせていただきます

 

まずはティーンのマーケティングデータから
ご説明いたします

 

そこで販売戦略といたしまして
ティーンに身近な

 

携帯サイトとの連携を
考えております

 

(声援)

 

≪(看護師)川原さん→

 

体調いかがですか?

 

きゃーッ

 

すみません…
パパと娘の一大事なんです

 

≪(律子)
もう間に合わないかと思った→

 

次 健太先輩のシュートが
決まんなかったら負けなの

 

お願いッ

 

(ホイッスル)

 

ケガしてたんですか?

 

(健太)負けたのは
俺がヘタだからだよ

 

ベスト8
先輩と約束したんだけどな

 

だらしないよな

 

負けたら意味ねえよ

 

あのッ!

 

ひと言だけ
言わせてもらってもいいですか?

 

えッ?

 

大人になったら
うまくいかないこと

 

いくらでもあります

 

勝って成功して
お金がある人が偉いんじゃない

 

必死でがんばって
一生懸命やってる人が偉いって

 

いろんな大人を見て
心からそう思いました

 

部活の後も

 

一人で残って自主練してる先輩を

 

ずっと見てきました

 

嫌なことがあっても

 

一生懸命サッカーしてる
健太先輩を見ると

 

はげまされるんです

 

元気になれるんです

 

だから…

 

そんな一生懸命な先輩が

 

健太先輩のことが…
ダメだ!

 

その先は 俺に言わしてくれ

 

好きだ

 

俺は 川原が大好きだ

 

(中嶋)以上で 説明を
終了させていただきます

 

(部長A)はい 販売ルートを
コンビニに限定してしまうのは…

 

(正明)従来どおり 全国一斉発売の
方が安全じゃないか?

 

やはり販売ルートの検証が甘いね

 

それは 予算面と抱き合わせて
十分に…

 

(森山)その件に関しては

 

川原君が復帰後に検討するという
ことになるんじゃないのかな?

 

はいッ できる限り善処いたします

 

しかし発売日まで
2ヵ月を切っているからね

 

≪(中嶋)川原リーダーとともに
十分 準備してまいりました→

 

商品展開には自信がありますッ

 

どうか ご検討ください!
却下だ!

 

リスクを回避するためにも

 

規定路線で
計画を進めるということで

 

いかがでしょう? 社長

 

(せきばらい)

 

お願いします!

 

我々のプランを 認めてください!

 

お願いします!

 

…会議は?

 

なんか…

 

なんか 俺じゃ
ダメだったみたいです

 

中嶋さんは しっかり
プレゼンしたんです

 

でも保守派の部長達に
反対されて…

 

(三船)結局 この会社には
生まれ変わる気なんかないんです

 

俺 悔しいよ…

 

悔しいっす

 

中嶋…

 

(香奈子が泣き出す)

 

(ノック)

 

(梶野)すいません この後

 

海外事業部との合同会議なんで
部屋あけてもらえますか?

 

聞いたよ 残念だったな

 

やっぱお前の言うとおりだったよ

 

俺達 末端の人間は
誰からも期待なんかされてない

 

エリート連中に気持ちよく
仕事させるための

 

会社の歯車にすぎないんだよな

 

≪(梶野)グチなら 今度
飲みながら聞いてやるよ→

 

すいません 出てもらえますか

 

〈やはり俺は
小梅のようにはなれないのか?〉

 

〈思い切りの悪い
人任せの人間に戻るのか?〉

 

〈いや…〉

 

あきらめちゃダメだよ

 

≪(和香子)えッ?

 

あきらめなければ
人も会社も変わるんだよ

 

ちょっと リーダー!

 

社長!

 

お待ちください!

 

今さらなんだ!?

 

会議は終わった 場をわきまえろ

 

リーダーッ

 

(桜木)失礼いたしました

 

社長は 本当に今のままでいいと
思ってらっしゃるんですか!?

 

今のままでは
この会社はダメになります!

 

(正明)川原君!→

 

社長に向かって 失礼だぞ

 

≪(中嶋)さすがにヤバイよ リーダー
社長!

 

ひと言だけ言わせてください!

 

今まで 上に従うのが
仕事だと思ってきました

 

一介のサラリーマンが
何を言ったってムダだって

 

でも そうやって会社のせいにして
甘えてきたんです

 

会社なんて そんなもんだって
思うことに慣れてしまってました

 

でも私は 会社だって
まっすぐ何かをぶつければ

 

応えてくれるってことを
信じたいんです!

 

社長 まいりましょう

 

いいから 君達

 

娘に… 語れる仕事がしたいんです

 

大事業を
成し遂げたいわけじゃない

 

自分が その仕事を一生懸命
やってるんだっていうことを

 

娘に話してやりたいんです

 

終身雇用なんて
時代遅れかもしれない

 

愛社精神なんて 今どき

 

はやらないかもしれません

 

でも社員はみんな

 

会社のために 何か役に立ちたいと

 

思っています

 

悩んでいます

 

私は この会社の

 

この仲間と

 

新しい美生化粧品を
作っていきたいんです!

 

(渡辺)私も

 

改革の必要性は感じていた

 

だからこそ 君の提案に
かけたいという思いがあった

 

勝負に出てみようじゃないか

 

レインボードリームは 定価500円
コンビニで販売

 

君の案のように進めよう

 

ありがとうございます…

 

ありがとうございます!

 

(拍手)

 

まだ 君のような社員がいたんだな

 

社長ッ

 

いやったー!

 

すごい~

 

≪(中嶋)リーダー
さすがリーダー!

 

ただいま

 

お帰りなさい

 

(ひそか)恭一郎さん
大丈夫そうでよかった

 

お義母さん ご心配かけました

 

具合は?
大丈夫

 

絶好調だよ 病院は?

 

私の演技力で何とかしたから

 

絶好調よ

 

助かったよママ

 

小梅は?
≪(理恵子)遅くなるみたいよ~

 

久々のデートだもの
ヤボなこと いいなさんな

 

デート?

 

〈そうだ 今日は
あの先輩の試合じゃないか〉

 

〈まさか勝ったお祝いだとか
何とか言って…〉

 

《川原 待てよ》

 

《待てってば》

 

《つっかまえた》

 

《あッ ゴメン》

 

《今日 勝てたのは
川原のおかげだよ》

 

《何かお礼がしたいんだ》

 

《私も 先輩のこと
お祝いしたいです》

 

ダメッ! ダメッ!

 

デートはいいけど
キスはダメ!

 

パパ パパ!
やっぱり病院戻る?

 

いや 心配無用だよ

 

ちょっと 見てくる
えッ?

 

ただ~いま
≪(理恵子)お帰りなさい

 

…ただいま

 

お帰りなさい 具合は?

 

大丈夫 絶好調だよッ

 

どうだったの おデートは?

 

やだ おばあちゃん
送ってもらっただけだよ

 

(鼻歌)

 

間違えた

 

小梅 小梅

 

なに?
試合 どうだった?

 

関係ないじゃん

 

関係ないってさ パパだって
大杉君と知らないわけじゃないし

 

気になんだよ 勝ったの?

 

負けた
そっかあ~

 

残念だったね
会議は?

 

小梅のプランさ 社長がさ…

 

認めてくれたぞ

 

…そっか

 

≪(理恵子)小梅 おフロ
先入ったら?

 

パパ
急ごう

 

ダッシュ ダッシュ
急げ 急げ

 

ていうか もういいのか

 

私 先入る

 

〈元に戻ってしまえば
こんなもんか〉

 

西野さんさ おなかすかない?

 

もしよかったら これ

 

営業部のヤツにもらったんだ→

 

昼間バタバタしてて
ご飯食べる時間もなかったでしょ

 

ごめんなさい

 

私 桃をとりに行くために
中嶋さんの優しさを利用しました

 

やだなあ 謝んないでよ

 

だって 俺 うれしかったんだもん

 

俺 好きな人と一緒に山登るの
夢だったから

 

いや そういうんじゃなくて
俺の田舎がさ

 

近所に山がいっぱいあってさ
失恋するたびに 山 登ってたんだ

 

頂上で でっかい空見上げてると
スッキリした気持ちになってさ

 

でも
またすぐ失恋しちゃうんだけどね

 

もし よかったらさ

 

また一緒に 山登りしない?

 

なんてね 冗談

 

じゃあ お疲れさん また明日

 

(和香子)おいしい!

 

えッ?

 

すごくおいしい

 

ほんとに おなかすいちゃいました
晩ご飯 ごちそうしてください

 

はい

 

(桜木)常務 今後のレインボードリームプロジェク
トのことで ご相談があるんですが

 

何だね?
川原恭一郎君のことです

 

ほう…

 

じゃあ 明日の関係各所への
あいさつまわり 同行してください

 

ビシッといきましょう 実質部長!
了解

 

帰りに散髪にでも寄るか
ポスターデザインのチェック お願いします

 

ああ こういうの好きだよ
女子高生

 

これでいきましょう
はい よろしくお願いします

 

忙しいと思うけど 失礼するよ

 

昨日は 申し訳ございませんでした

 

いや
今日は連絡があって来たんだ

 

このレインボードリームプロジェクトが
部に昇格することになった

 

やったあ

 

すいません

 

本当にありがとうございます

 

これで 名実ともに
リーダーが部長だよ

 

井上君

 

彼が そのレインボードリーム部の
新しい部長だ

 

(植草)これからは
井上部長のもと 頑張ってくれ

 

(井上)明日から よろしく

 

よろしくお願いします

 

≪(椎名)なんでリーダーが
部長になれないんですか?

 

(前田)リーダー ラインから外れてるから
あーッ すいません!

 

≪(三船)井上さんは
桜木さんの側近ですからね

 

桜木さんに かけあってくるわ
いいよ 中嶋

 

ダメですよ みんなで行きましょう
いいよ みんな

 

みんなの その気持ちだけで
十分だ

 

あッ それよりみんな
今夜 空いてるかな?

 

ウチで打ち上げ?

 

レインボードリームプロジェクトが部に昇格した
お祝いも兼ねてな

 

すっごい
パパ 部長になったの?

 

部長は 別の人だよ

 

そっか

 

でも ここまでプロジェクトを引っぱって
きたのは 小梅なわけだし

 

小梅にも参加してもらいたいんだ
そのために ウチへ呼んだんだから

 

私も
みんなに会いたい気もするけどさ

 

今日 健太先輩
大学の推薦 決まったんだよね

 

だから何?
お祝いしてあげたいの

 

お祝い?

 

《私も 先輩のこと
お祝いしたいです》

 

ダメダメ ダメ ダメダメ ダメ!

 

お祝いは いいけど キスはダメ!
はーッ? ていうかパパに関係ない

 

切るよ
待て! 大杉君も一緒に

 

お祝いしようじゃないの
えッ!?

 

喜んでうかがうよ
川原のお父さん 好きだし

 

初めて会ったときから 気に入って
もらえてるみたいで うれしいよ

 

結構 テンション高い人だよね

 

〈中身 私だったんだけどね〉

 

俺 ああいう人 好きだな
じゃあ あとでね

 

待ってます

 

(律子)小梅!
遅刻なんて珍しいね

 

あのオヤジ マジでムカツク
どうしたの?

 

頭ごなしに
小関先輩と別れろって言うんだよ

 

いきなりビックリ…
なんで?

 

路チューしてんの
パパに見られちゃったの

 

律子
もう 小関先輩とチューしたの?

 

「もう」って
小梅が遅すぎるんだよ

 

だって…

 

〈私なんて 「ギュッ」も
パパに取られたままなのに〉

 

私 絶対に別れないから
今夜 パパと勝負だから

 

さあ 皆さん
どんどん食べて 飲んでくださいね

 

(和香子)これは?

 

あと じゃあ レモンも入れて
はい

 

あーッ 中嶋さんと西野さん
なんか怪しくないですか?

 

レインボードリームカップル 誕生ですか?
やめてくださいよ

 

超ウケる

 

ただいま
皆さん いらっしゃいませ

 

お邪魔します
もしかして 小梅ちゃんの彼氏?

 

やる~
うるさいよ 中嶋

 

中嶋さん 皆さん
大杉先輩です

 

はじめまして 大杉です

 

ずいぶん遅かったじゃない
こんばんは お父さん

 

僕は 君のお父さんじゃないよ
えッ!?

 

ちょっとごめんなさい

 

パパ

 

態度 変わりすぎ
先輩 ドン引きじゃん

 

十分 愛想良くしてるだろ
ふ~ん じゃあ 私 先輩と

 

2階行ってこよーっと
大杉君 こっち座って

 

ちょっと

 

推薦 陵南大の文学部
決まったんだって?

 

おめでとう
すげえ おめでとう

 

君は 若いわりに
司馬遼太郎を読み込んでるから

 

有意義な学生生活になるだろうな
なんで知ってるんですか?

 

僕の愛読書
私が話したんです

 

そうそう
もしかして

 

川原の司馬遼太郎好きは
お父さん譲り?

 

〈徹夜で司馬遼太郎 読まなくちゃ〉

 

仲いいんですね リーダーんちは
いいえ 全然

 

我々のプロジェクトチームの部昇格と
大杉君の大学合格を祝って

 

乾杯!
乾杯!

 

おめでとう

 

でもさ これが リーダーの部長昇進の
パーティーなら もっと最高なのにな

 

昇進なんて がらじゃないよ
それに 今回のことは

 

私だけの力じゃない

 

みんなが
ロビーで拍手をしてくれたとき

 

「ああ いい仲間と仕事ができて
よかったな」って思ったんだ

 

あれで 定年まで今の会社で
がんばる力もらったよ ありがとう

 

リーダー ほんとカッコよかったです
社長を呼びとめたときは→

 

どうなることかと思ったけど

 

川原のお父さん カッコいいね
そうかな

 

(メール受信)

 

何だ?

 

(律子)お邪魔します!
小梅 助けて

 

律子 どうしたの?
大変なの

 

(中山)お邪魔します
律子のパパ

 

中山さん…
皆さん おそろいで

 

律子! お家に帰るんだ
このバカ娘がッ

 

勝手に人んちに入ってこないでよ
人んちって お前んちじゃないだろ

 

高校生のくせに 男の子と
旅行なんて 絶対に許しません!

 

なんでよ?

 

温泉旅行 バレちゃったの?
なんで小梅のパパが知ってんの?

 

えッ…

 

えッ…

 

すいません

 

あの… 小関は 中山のことを
真剣に考えてます

 

お前もグルか 貴様ッ

 

そうやって いつも頭ごなしに
どなってばっかり

 

パパに私の気持ちなんか
分かんないよ!

 

何だと!?
まあ 落ち着いて

 

そんなことないよ 律子

 

大人って結構 子供のこと
分かろうと思ってるもんだよ

 

親心語るなんて
しっかりしてんなあ

 

分かりたいけど 分かんないから
つい どなっちゃったり

 

必要以上に
心配したりするもんなんだよ

 

そうなんだよ

 

まじめに勉強してるのかと思った
ら 学校に何しに行ってるんだよ?

 

遊びに行ってんのか?
それは違いますよ

 

子供だって 学校に
遊びに行ってるわけじゃない

 

勉強だって難しいし
いろいろ大変なんですよ

 

それは 温泉旅行は
ちょっと賛成できないけど

 

まあ年ごろなんだし 大人の世界に
あこがれて つい背伸びをしたり

 

間違ったりすることも
あるでしょう

 

でも 自分の子供なんですから
とことん信じてやりましょうよ

 

そうすれば 子供だって

 

決して 親を裏切るようなことは
しないと思います

 

私も パパのこと ウザイって
思うこと すんごいよくある

 

でも大人って
結構がんばってんだよ

 

ウザイこと言うだけのこと
やってんの

 

もう一度 話し合ってみてください

 

友達も 家族も

 

ケンカしたときこそ
きずなを深めるチャンスですよ

 

私さ

 

パパと入れかわって よかったかも

 

私 自分を好きって言える大人に
なるよ

 

ああ いい月夜だねえ

 

おばあちゃん 桃の伝説 教えて

 

あの桃はね 昔 昔

 

病気の娘を持った父親が

 

自分が身代わりになってでも
娘の病気を治してくださいって

 

祈りをこめて 植えた桃なんだ
同じように娘も

 

早く病気を治して 父の代わりに
働きたいと願っていた

 

親子愛の象徴みたいな
桃なんですね

 

その桃
食べるだけで入れかわるの?

 

食べるだけじゃダメよ
やっぱり…

 

桃を食べた人間のどちらかが 命を
かけて 相手を心から守りたいと

 

思ったとき 入れかわるんだよ

 

〈パパが私を命がけで守ったから
私達 入れかわったってこと?〉

 

そして 守ってもらった人間も
命がけで 助けたい 守りたいと

 

思ったとき
二人は 元の姿に戻るの

 

〈ということは 小梅は 命がけで〉

 

〈俺を守ろうとしてくれた
ってことか〉

 

でもね 本当に大事なのは
戻ってからの7日間

 

えッ?
まだ 何かあるの?

 

戻ったあとの7日間
仲良くしないと

 

また 入れかわっちゃうんだよ
えッ!?

 

でもね 7日間 お互いを
変わらず思いあうことができたら

 

二人は永遠に
深~い 深いきずなで 結ばれる

 

あんたがたは どうかね?

 

ヘッヘッヘ…

 

〈お義母さんは 俺達が入れかわっ
てたことを知ってるのか?〉

 

〈まさか…〉

 

小梅 先 お風呂入っちゃったら?
パパの前がいいんでしょ?

 

あッ… べつにいいよ
パパのあとでも

 

えッ?

 

いいよ 小梅 先 入れよ

 

いいってば
いやいや…

 

譲ってんじゃん ほら…
じゃあ 私 入ろう

 

(鼻歌)

 

〈ほんとは 前より パパのこと
ウザイって思ってない〉

 

〈前は なんであんなに
パパがウザかったんだろう?〉

 

いい月だなあ
うん

 

できた!
うまそうだね

 

そっちのタコさん食べていいよ
失敗だから

 

いいの?
7日間は仲良くしないとマズイからさ

 

〈でも パパをあんまり調子にのせ
ちゃうのもちょっとムカつくから〉

 

〈黙ってるけどね〉

 

だったら食べないでよ!

 

〈今日から
井上さん 来るんだなあ〉

 

川原君
はい

 

ちょっといいかな?

 

〈きた… やっぱり左遷か〉

 

(渡辺)君には レインボードリームからは
外れてもらう

 

はい

 

〈やっぱり〉

 

君には 新たに設置する
改革推進部の部長を頼む

 

ぶ… 部長ですか?

 

部長? 私が?

 

どうして?

 

いい仕事をするには
ライバルが必要だからな

 

桜木さん…
君の手腕で

 

美生化粧品を
生まれ変わらせてくれ

 

がんばります!

 

やったー!
大出世ですよ

 

やったー!

 

〈小梅との入れかわりは神様からの
プレゼントだったのだろうか?〉

 

(両角)川原!

 

おお すごいね
これ 全部作ったの?

 

あのさ

 

「小梅」って呼んでいい?

 

〈今回のことがなければ
私は 娘のことをきっと〉

 

〈何ひとつ分からないまま 少しず
つ大人になっているのも気づかず〉

 

〈ろくに口もきけないまま
だったかもしれない〉

 

懐かしいなあ

 

〈あの嵐のような日々は
一体何だったのか?〉

 

パパ 部長昇進 おめでとう!

 

ありがとう

 

〈もしかしたら
この穏やかな7日間のために〉

 

〈あったのかもしれない〉

 

似てないな
似てるよ

 

「パパと結婚するー」

 

〈きずななんて 目に見えやしない〉

 

〈7日たったら また 冷たい小梅に
戻っているのかもしれない〉

 

借りるよ

 

〈でも
どんなにそっけなくされたって〉

 

〈私は きっと感じることが
できるだろう〉

 

〈小梅との間に
確かな何かが あることを〉

 

(目覚まし時計のベル)

 

(止める)

 

ウソ また入れかわっちゃったの?
マジで?

 

ごめん 冗談

 

調子のんないでよ! ていうか
部屋に入ってこないで

 

もうッ 早く出て

 

フーッ

 

おもしろくなかった?
おもしろくないよ バカ

 

〈やっぱり
優しいのは 7日間だけだったか〉

 

〈だよな〉

 

パパ

 

ネクタイ 曲がってる
ありがとう

 

この先もさ たまには会社のこと
相談にのってあげてもいいよ

 

ほんとか?
うん

 

頼りにしてるよ
がんばってね 川原部長

 

小梅
やめてよ

 

遅刻するから じゃあね
一緒に行こう

 

ヤダ
なんでだよ いいじゃん

 

「じゃん」とかやめてよ キモい
また入れかわったときの練習

 

入れかわんないよ!